医師になって12年間大学病院に所属し、大学病院やいくつかの総合病院で勤務をしました。大きな病院では、”皮膚がん”の患者さんを担当することも度々ありました。マインドパワーを手にして6年、自分の手で患者さんの痛みが取れるようになって、以前よりも心と身体を一つにとらえられるようになって、自分のしていたことが表面的な対症療法に過ぎなかったと初めて知りました。そして、時々思い起こす患者さんの中に、こんな方がいらっしゃいました。
60代の男性。足の裏のイボか何かだと思って、自分で削ったりしているうちに病変が大きくなって、皮膚科を受診をされました。症状が出てから既に何年もたっており、受診をされた際には、明らかない”皮膚がん”だとわかる所見でした。がんは皮膚の深くに及んでおり、男性は足の切断を余儀なくされました。その後、リンパ節転移が見つかったため抗癌剤治療を行いました。しばらくして膝に転移したため、膝上で下肢を切断し、その後、ふともも、鼠経リンパ節、肺に転移し、末期の状態におちいってしまいました。まるでいたちごっこでした。
私が当直をしていたある夜、彼は吐血をして救急外来を受診、前任の主治医がすでにいなかったため、私が主治医になりました。肺の大きな気管支が腫瘍のため閉塞していて、放置しておくと窒息してしまうため、それを一時的に回避する目的で放射線治療を行いました。放射線が効き、ステロイドの効果もあって何が起こってもおかしくない状態であるものの、しばらく安定した日が続きました。病院が、急性期の病院であったため長期の入院が難しく、緩和ケアのある病院に移ることになりました。
彼はとても穏やかな性格で、癌の痛みやきつさにも関わらず文句を言ったり、怒ったり、嘆いたりすることはありませんでした。彼は転院も望んでいなかったけれど何も言いませんでした。翌日に転院を控えた夕方、彼の病室に会いにいくと、いつもより気分が良いようで、和やかに会話が弾みました。そして、彼と話すのが最後だという気が一瞬したもの、こんなに調子がよいんだからとその考えを打ち消しました。
その日の夜、男性は急変しました。呼吸が苦しいのか不穏で落ち着かなくなり、いつもは穏やかな彼が家族に乱暴な言葉を吐き、一時もじっとしていません。家族は目を真っ赤にしながら彼に付き添っており、沈静をかけることを望まれ、モルヒネ(麻薬)を点滴で投与し、彼は眠ったまま息を引き取りました。
霊安室に運ばれた男性を見送るときに、息子さんが私の目をまっすぐ見て「先生でよかった」と言われたこと、数週間後、奥様が病院を訪ねてくださり、お礼の手紙を下さったことを私は忘れません。
マインドパワーを手にした今思います。今なら彼を救えたかもしれない。少なくとも彼の痛みや呼吸苦を楽にすることができたのに。家族に間違えなくパワーのことを伝えたのに。家族も自分の手で、彼の苦しみを取れたのに…。
今なら、男性ともっと話せることがたくさんあったのにと思います。機械的に病室を訪れ、症状の確認をして、短時間で去っていくのではなくて、本人のこと、家族のこと、日常の些細なこと、そんな何気ない会話の中で心情を吐露できたかもしれません。男性の不安をもっと感じ取っていれば、かける言葉も違ったでしょう。
男性が入院して間もない頃、ご家族を呼んで、画像を見せながら予後の説明をしました。「大きな気管支が閉塞したり、腫瘍が巻き込んでいる血管が破れて出血したり、何があってもおかしくはない状況です。長くて1か月、あるいはもっと短いかもしれません。」意識のエネルギーの大切さを実感している今なら、事実は伝えても、余命を宣告したりしませんでした。家族の温かいサポートによって自然治癒力が高まること、お互いに今できることを精一杯していくことなど、もっと他にお伝えできることがあったでしょう。
彼が転院前日に急変したのは偶然ではありません。知らない病院に転院する不安は間違いなく彼のぎりぎりの体に影響を与えたのだと思っています。急性期の病院の仕組み上、仕方がなかったかもしれませんが、もっと違う関わり方ができたかもしれません。
私がこうしてパワーを伝えているのは生きてほしいからです。愛する家族に何もできなかったと 後悔を残してほしくないからです。西洋医学には限界があり、今の医療のあり方では患者さんは不安を多く持ってしまい、その不安が自然治癒力を下げ、可能性を閉ざしてしまうように感じています。そして、治った・治らなかったという結果よりも、充実して希望を持って一瞬一瞬生きることの積み重ねや、その中で得られる感動の方が大切なのではないかと思っています。
人間の自然治癒力は、無限の可能性を秘めています。
よいと思うものは何でも取り入れて元気になっていただきたいです。
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